~急性期・回復期の最適な連携方法の構築~
2025年7月11日
国立研究開発法人 国立循環器病研究センター
医療法人 成和会
国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津 欣也)と医療法人成和会(大阪府茨木市、理事長:大槻 勝紀)は2025年7月10日に「心臓リハビリテーションに関する最適な連携方法を構築するための協定」を締結しました。この連携協定では、心血管疾患患者に一貫性のある医療を提供することを目的として、国立循環器病研究センター病院の「急性期」と、医療法人成和会北大阪ほうせんか病院の「回復期」という、それぞれの医療機能を有効に発揮したモデルの構築を目指します。

概要
我が国では高齢化に伴い循環器疾患の患者が増加しており、発症急性期の治療後の適切で効果的なリハビリテーションのニーズが大きく増えています。しかしながら、これまでは心疾患患者の大多数は急性期の治療が終わると直接自宅へ退院するため、脳卒中と異なり、急性期病院と回復期リハビリテーション病院との治療連携は十分行われているとは言えない状況にあります。近年、急性期病院から直接自宅へ退院できない心疾患患者が増加しつつあり、急性期病院と回復期リハビリテーション病院との間での心臓リハビリテーション連携の必要性が高まっています。一方、その標準的・効果的な連携方法は十分検討されている状態とは言えず、まだ手探り状態というのが現状です。
本協定では、このような状況を踏まえ、急性期・回復期というそれぞれの医療機能を有効に発揮して、心血管疾患患者に一貫性のある良質な医療を提供するモデルの構築のために締結したものです。
具体的には、心疾患患者に対する最適な治療とリハビリテーションの提供のための連携方法の研究をこの連携協定に基づき進めることにより、運用可能な医療機関間連携のロールモデルの構築を行い、その結果を地域の医療や我が国の医療に還元することを目的としています。
本協定で構築される運用可能なロールモデルを地域そして全国に提示し還元することにより、より多くの心疾患患者の日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)の維持・向上、入院期間の短縮、再入院のリスクをできるだけ低くしての退院、そして自宅・地域生活への円滑な復帰が期待されます。
なお、国立循環器病研究センターにとって、初めての個別の医療機関との連携協定の締結です。
主な連携内容
- シームレスな連携構築への取り組み
国立循環器病研究センター病院では、入院した心血管疾患患者に対して急性期治療と急性期の心臓リハビリテーションを行う。退院後は、医療法人成和会北大阪ほうせんか病院で回復期心臓リハビリテーションを実施する。 - 連携による最適化
医療の質を向上させ、人的資源・経済的資源を最適化し、患者満足度を高めるための連携を効果的・効率的に行う。 - 協力体制
質の高い循環器リハビリテーション医療を目指して、臨床研究を含む学術的な協力関係を築いて、共同研究を実施する。臨床における課題の解決や、ロールモデル構築のための取組みを進める。 - 人的交流
本協定の目的達成のために、人的交流を含む必要な事業を共同で行う。
解説
高齢心疾患患者への心臓リハビリテーションモデルの構築を目指して
国立循環器病研究センター 心血管リハビリテーション科医長 村田 誠
運動療法をはじめとした包括的な心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)を心疾患患者に実施することで、心疾患再発率の低下、QOLの改善が期待されます。この心臓リハビリプログラムは現在のところ外来通院を基本として行われており、合計36回程度の頻回通院を行うと効果が見込まれるとされています。
しかしながら、高齢の患者さんの中には、ぎりぎりの体力で退院し、その後も自宅にこもる場合や、通院手段が確保できず頻回の通院が難しいなど、本来心臓リハビリの適応ではあるものの、実施できないケースが増加しています。
今回の取組は、急性期医療を提供する国立循環器病研究センターと、多くのスタッフを有し最長90日間の入院でのリハビリテーション治療を提供できる北大阪ほうせんか病院が連携して入院心臓リハビリを提供し、実例を重ね、他の医療機関でも導入可能なモデルを構築するものです。構築されたあかつきには、広く情報を提供し、他の医療機関でも実施していただくことにより、一人でも多くの高齢心疾患患者の自宅退院や再発予防、QOLの改善につながるよう取り組みを進めたいと考えています。

心臓リハビリテーションに関する最適な連携方法を構築するための協定
北大阪ほうせんか病院 副院長・循環器内科 後藤 葉一
急性心筋梗塞や心不全などの心疾患患者が心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)に参加することにより、運動能力と生活の質(QOL)が改善し、再入院や心臓病死亡が減少するという予後改善効果が証明されており、日本・米国・欧州の診療ガイドラインにおいて心臓リハビリへの参加が強く推奨されています。
わが国では、これまでは心疾患患者は急性期病院への入院後、治療を受けたあとはほぼ全員が自宅へ退院できていました。ところが高齢化が進んだ現在、急性期病院の入院中に体力が低下し自宅へ退院できない患者が増加している一方で、多くのリハビリ病院は心疾患患者の受入れ体制が未整備の状態です。
そこで、心疾患の高度急性期病院である国立循環器病研究センターと回復期心臓リハビリ体制を備える北大阪ほうせんか病院が連携して、全国の先駆けとして、心臓リハビリに関する急性期病院と回復期リハビリ病院との間のシームレスな連携を構築することにより、心疾患患者に質の高い回復期心臓リハビリを提供するロールモデルを構築することとし、連携協定の締結に至りました。
今後は両者が協力して、円滑かつ効率的な転院プロセス、急性期から回復期まで一貫した心臓リハビリの効果的な実施方法、患者アウトカムの評価等に関する共同研究や人材の育成などにおいて具体的な連携を進めて行く予定です。
【国立研究開発法人国立循環器病研究センター病院の概要】
住所:〒564-8565大阪府吹田市岸部新町6番1号
電話:0570-012-545(ナビダイヤル)
ホームページ:https://www.ncvc.go.jp/
病床数:550床
沿革:1977年日本で2番目のナショナルセンターとして開設
2019年吹田市岸部新町(現在地へ移転)
病院内に循環器リハビリテーション部を設置
心血管リハビリテーション科、脳血管リハビリテーション科の2科。
医師5名、理学療法士25名/作業療法士6名/言語聴覚士5名の体制で急性期のリハビリテーションに取り組んでいる。
【医療法人成和会北大阪ほうせんか病院の概要】
住所:〒567-0052大阪府茨木市室山1丁目2番2号
電話:072-643-6921(代表)
ホームページ:https://seiwa-h.info
病床数:280床
沿革:1943年北大阪警察病院として開院され
2019年(医)成和会へ事業譲渡
回復期病棟が135床あり、脳血管疾患・骨折・心血管疾患などの患者さまへ一人ひとりに合わせたリハビリを実施。
各専門医の他、理学療法士/作業療法士/言語聴覚士67名の体制で取り組んでいる。
【調印式の様子】
【報道機関からの問い合わせ先】
国立循環器病研究センター 企画戦略局 北波
TEL : 06-6170-1069 (40001) MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp
医療法人成和会 運営本部 田中
TEL : 072-643-6921 MAIL: k-housenka-co@seiwa-h.org